FLAGSのインタビュー企画「FLAGSな人たち」では、メンバー一人ひとりが掲げる「FLAG」と、その旗に向かうアクションを伺っています。

今回のゲストは、ミシェルさん です。

ファッション業界で約20年働き、自らヴィンテージショップを経営。その後、まったく異なる業界へ飛び込み、現在は物流会社で会社員として働いています。

一度は自分の旗を掲げて事業をつくり、そしてその旗を下ろした経験を持つミシェルさん。今はまだ、次に掲げる大きな旗を探している途中だと話します。

けれど、旗が見つからないからといって、立ち止まっているわけではありません。

誰かの旗を見に行くこと。さまざまな人の生き方に触れること。そして、自分の中にある小さな思いや関心を拾い集めること。

それもまた、次の旗に向かうための大切なアクションなのかもしれません。


「どうして、この人たちはこんなに自由なのか」

ミシェルさんの原点には、高校1年生のときに留学したアメリカでの体験があります。

当時の日本はバブル期。街にはブランドの洋服を身につけた人ばかりがあふれていました。

一方、アメリカの片田舎で目にしたのは、裾を切ったTシャツや大胆に加工したジーンズを、自分らしく着こなす人たちでした。

「着ているもの自体は特別ではないのに、どうしてこの人たちはこんなに自由なんだろう」

その衝撃から、大学への内部進学ではなく、ファッションを専門的に学ぶ道を選びます。

文化服装学院で服づくりを学び、卒業後は舞台衣装の仕事へ。その後は販売の世界に移り、思いがけずトップセールスになったこともありました。

ファッション業界に戻ってからは、複数店舗を任される店長として働き、古着店では売上を大きく伸ばしました。

ところが、あまりに売れたために仕入れが追いつかなくなるという、古着ならではの問題に直面します。最終的にはオーナーから「自分で店をやった方がいい」と背中を押され、フリーマーケットで経験を積んだのち、高円寺に自身のヴィンテージショップを開きました。

旗は上げるより、旗を下ろす方が大変だった

自身の店を持ってからは、一人でアメリカやヨーロッパを回り、商品を買い付ける日々を送ります。

自分で考え、自分で決め、自分で商売をつくる。まさに、自ら掲げた旗に向かって走り続ける生活でした。

しかし、時代や業界を取り巻く環境が変化するなかで、店を閉じる決断をします。

ミシェルさんは、その経験についてこう話します。

「起業って簡単ですけど、廃業ってめちゃめちゃ大変なんです」

何かを始めるときには、未来への期待があります。
一方で、自分がつくったものを終わらせるには、大きな痛みと覚悟が伴います。

「もう一度起業するなら、二度と廃業しないつもりでやりたい」

そう思うほど、旗を下ろす経験はミシェルさんの中に深く刻まれました。

店を閉じた後、20年近く身を置いたファッション業界を離れ、初めて会社員として働き始めます。「まったく違う業界へ飛び込むなら、今しかない」と考えたからです。

現在は物流会社に勤務し、気づけば12年目。海や船を身近に感じる環境で、新たなキャリアを歩んでいます。

大きな旗は、まだ見つかっていない

そんなミシェルさんに、今掲げている旗を尋ねました。

返ってきたのは、意外にも率直な言葉でした。

「自分の旗って何?って言われると、分からない。簡単に言いたくない」

小さな興味や、やってみたいことはたくさんある。けれど、それらを拾い集めても、まだ一つの大きな旗にはなっていないといいます。

一度、本気で旗を掲げ、それを下ろした経験があるからこそ、簡単な言葉で次の旗を決めたくない。

何かを掲げることは、単に目標を口にすることではありません。その旗に向かって行動し、ときには人生そのものを動かしていくことです。

だからこそ、ミシェルさんは焦らず、自分の軸を見つめています。

旗を立てる人たちを、まずは見に行く

では、まだ旗が見つからない今、何をしているのでしょうか。

ミシェルさんの答えは、明快でした。

「旗を立てている人たちを、とにかく見る」

その言葉につながる印象的な出来事が、アメリカ独立記念日のイベントでありました。

式典では、アメリカの各州の旗を持った人たちが、姿勢を崩すことなく整然と並んでいました。州の名前が呼ばれるたびに、一人ずつ旗を掲げ、観客から歓声が上がります。

旗を立てる人がいれば、それを見て、声を上げる人がいる。

その光景を見ながら、ミシェルさんはFLAGSのことを考えたといいます。

「今、旗を立てられなくてもいい。旗を立てている人の姿を見ることで、自分に何ができるかを模索していく。FLAGSは、そういう場所であってもいいんじゃないかな」

FLAGSに入ったからといって、すぐに大きな旗を掲げる必要はありません。

誰かの挑戦に触れたり、応援したり、ときには一緒に動いてみたりする。その過程で、自分の中にある思いが少しずつ形になっていくこともあります。

旗を見ることも、立派な最初のアクションです。

軸ができれば、旗は自然に上がっていく

ミシェルさんは、旗と軸の関係についても、印象的な表現をしていました。

「旗だけ持っても、軸がなければ倒れてしまう。逆に軸ができてきたら、倒れていた旗が自然に上がっていくのかもしれない」

今日はこの旗、明日は別の旗と、無理に目標をつくっても、自分の中に軸がなければ長くは続きません。

けれど、いろいろな人に会い、経験を重ね、心が動くものを集めていけば、やがて自分の軸が育っていく。

今は旗が見えなくても、その土台は確実につくられているかもしれません。

だから、誰かと比べて焦る必要はない。

「まずは、見ればいい。見るだけでもいいと思います」

その言葉は、旗を探している多くの人の背中を、静かに押してくれます。

次の旗に出会うために、人に会い、世界を見に行く。それもまた、FLAGSで始められる大切なアクションです。